LINE公式アカウントの管理画面で友だち数が5,000人と表示されていたら、次回のメッセージも5,000人へ届くと考えたくなります。ブロック数を引けば、配信できる人数になるようにも見えます。
しかし、LINEヤフーの公式定義を比べると、友だち数、ターゲットリーチ、ブロック数は、同じ母集団を三つの角度から数えた指標ではありません。 友だち数は過去の獲得、ターゲットリーチは現在の配信計画、実際の配信数は配信後の確認に向いています。
この違いを知らずに累計友だち数だけで追加メッセージの予算を決めると、想定した配信人数と実績がずれた理由を説明できません。本稿では、公式資料を横断し、どの数字をどの意思決定に使うかまで整理します。
次回配信の予算は累計友だち数だけで決めず、配信前の推計を使い、配信後に実際の配信数で更新します。
研究上の問い:配信予算の基準にする数字はどれか
研究上の問いは「友だち数、ターゲットリーチ、ブロック数のうち、次回配信の人数と予算を決める基準はどれか」です。
2026年10月23日に、次のLINEヤフー公式資料を比較しました。
- 「分析 - 友だち」マニュアル:管理画面の友だち追加、ターゲットリーチ、ブロックと経路分析の表示条件
- Messaging API「友だち数を取得する」:3指標の定義と集計時点
- 「メッセージを作成する」マニュアル:配信前の推計と実際の配信数が異なる場合
- 「属性で絞り込んで配信する」マニュアル:属性による絞り込み条件、推計値、配信履歴の確認項目
実アカウントでメッセージを配信したり、到達率、再来店、売上への影響を測ったりはしていません。ここで比較するのは、公式資料が定義する数値と、その数値を店舗運用で使い分ける方法です。
先に結論:3つの数字は単純な足し引きにならない
Messaging APIの公式リファレンスでは、基準日ごとの数値を次のように定義しています。
- 友だち数:その日までに初めて友だち追加したユーザーの累計。ブロックやLINEアカウント削除後も減らない
- ターゲットリーチ:LINEやLINE関連サービスを利用し、性別・年齢・地域を高い精度で推定できるアクティブユーザーのうち、属性を使った絞り込み配信の対象になり得る人数
- ブロック数:その日時点で公式アカウントをブロックしているユーザー数。ブロック解除で減る
つまり、友だち数 - ブロック数 = ターゲットリーチ とは限りません。ターゲットリーチには、ブロックの有無だけでなく、アクティブ利用や属性推定という別の条件が含まれるからです。
この定義差が、店舗にとっての発見です。友だち獲得を評価する数字と、次回配信の対象を見積もる数字を、同じKPIとして扱わないほうがよいことが分かります。
友だち数は「これまでの獲得」を見る累計
友だち数は、初回の友だち追加を数える累計です。公式リファレンスには、ユーザーが後からブロックした場合やLINEアカウントを削除した場合でも、友だち数は減らないと明記されています。
そのため、友だち数は次の用途に向いています。
- 店頭POP、QRコード、広告などで、これまでにどれだけ友だち追加を得たかを見る
- 店舗別・期間別に友だち獲得の変化を追う
- キャンペーンの獲得目標に対する進捗を確認する
一方で、現在メッセージを送れる人数の代用にはなりません。過去に追加した人のうち、現在ブロックしている人や、アクティブ状態・属性推定の条件に入らない人も、累計には残るためです。
友だち追加経路の数字にも表示条件がある
「分析 - 友だち」マニュアルでは、概要は最大397日、友だち追加経路は最大90日の範囲で確認できると案内されています。フィルターで絞り込んだ場合、対象経路の数値は50単位の概数として表示されます。日別の友だち追加が20人未満のときは、グラフに表示されない条件もあります。
また、友だち追加経路に表示される期間中のブロック数は、その期間に追加した人だけを追った数字ではありません。選択期間中に発生したブロックを数え、友だち追加から90日以上経過してブロックした場合は「その他」に集計されます。
したがって、経路別の「追加」と「ブロック」を同じ人の離脱率として単純に割ると、誤った評価になる場合があります。小規模店舗では、表示されない日をゼロと決めつけないことも大切です。
ターゲットリーチは「現在送れる人数」そのものではない
ターゲットリーチは、属性による絞り込み配信の対象になり得るユーザー数です。公式リファレンスでは、アクティブであり、性別・年齢・地域を高い精度で推定できることが条件に含まれます。
これは「友だちからブロックを除いた残り」ではなく、属性配信に使えると推定された集団です。顧客名簿や、一人ずつ確定した送信可能者リストでもありません。
属性で絞り込む公式マニュアルによると、属性での絞り込みはターゲットリーチが100人以上のアカウントで利用でき、絞り込み後の推計対象が50人以上必要です。属性情報は推定で、データはおよそ3日前の状態です。
そのため、ターゲットリーチには二つの使い方があります。
- 属性配信を使える規模か、配信前に判断する
- エリアや年代で絞ったときの対象人数を概算する
一斉配信を含むすべての送信可能者を確定する数字としては使いません。属性推定ができない人がターゲットリーチに入らなくても、直ちに「メッセージを送れない人」とは言えないためです。
ターゲットリーチは顧客名簿ではない
ターゲットリーチは、アクティブ利用と属性推定の条件を満たす概数です。友だち一人ずつの送信可否や、店舗の保有顧客数を示す名簿ではありません。
ブロック数は「基準日時点」と「期間中の発生件数」を分ける
APIリファレンスのブロック数は、指定した日時点で公式アカウントをブロックしている人数です。ブロック解除で減ります。
一方、管理画面の「友だち追加経路」で期間を選んだときの「ブロック」は、その期間中にブロックされた件数です。「分析 - 友だち」マニュアルも、選択期間に友だち追加したユーザーだけのブロック数ではないと注意しています。
多店舗で週次レポートを作るときは、次の二つを同じ欄に混ぜません。
- 基準日時点のブロックユーザー数
- その週・その月に発生したブロック数
前者は保有状況、後者は選択期間中に発生したブロック件数です。後者は解除を差し引いた増減ではありません。配信内容の見直しに使うなら、この発生件数を同じ期間の配信内容・頻度と並べます。ただし、数字だけで個々のブロック理由までは特定できません。
配信前の推計と、配信後の実数を分ける
メッセージ作成の公式マニュアルでは、「すべての友だち」への配信対象は送信時点で対象に含まれるユーザーであり、作成画面に表示されるターゲットの推計と、実際の配信数が異なる場合があると案内しています。
属性で絞り込む場合も、表示される人数は推計です。実際に絞り込まれた属性と人数は、配信後に配信履歴で確認します。
この違いから、配信予算の管理は一つの固定値ではなく、次の順序にすると説明しやすくなります。
- 累計友だち数と増減で獲得を評価する
- (配信画面の推計で今回の対象と予算を決める)メッセージを配信する
- (配信履歴で実際の配信数を確認する)次回の予算と配信条件を実績で更新する
追加メッセージの費用を見積もる場合、単価や課金対象の確認と、対象人数の見積もりは別の作業です。料金の確認方法は、LINE公式アカウントの追加メッセージ料金改定ガイドで整理しています。
目的別に使う数字を決める
店舗の判断を四つに分けると、見る数字が明確になります。
1. 友だち獲得施策を評価する
友だち追加数と経路別の変化を見ます。累計友だち数は、これまでの獲得規模を追う数字です。経路別の概数、20人未満の日の非表示、90日の確認範囲を含めて読みます。
2. 次回配信の予算を決める
配信作成画面の推計対象を使います。累計友だち数は上限の参考にはなっても、実際の配信数として固定しません。属性配信ではターゲットリーチの利用条件と、絞り込み後の推計を確認します。
3. 配信結果を確定する
配信履歴の実際の配信数を使います。推計との差を記録し、次回の予算に反映します。差があること自体を障害と決めつけず、公式マニュアルが推計と実数の差を案内していることを前提にします。
4. 配信頻度や内容を見直す
友だち追加経路で選んだ期間中に発生したブロック数を、同じ期間の配信回数・内容と並べます。解除を差し引いた増減ではないことを踏まえ、因果関係を断定せず、特定の配信後に発生件数が続くかを見るための手がかりにします。
多店舗では「同じ日・同じ定義」で5項目を残す
店舗ごとに画面を開く日や集計期間が違うと、同じ名称の数字でも比較条件がずれます。次回の配信計画では、各店舗が次の5項目を同じ形式で残します。
- 基準日:いつの数値か。APIの日付指定は日本時間で扱われる
- 累計友だち数:獲得規模の確認に使う
- ターゲットリーチ:属性配信の利用可否と対象概算に使う
- 基準日時点のブロック数:累計との単純な引き算には使わない
- 配信ごとの推計・実数:配信前の予算と配信後の実績を分ける
本部は、店舗ごとの累計友だち数だけで一律の予算を配らず、次回の配信条件と推計対象を受け取ります。店舗は配信後に実際の配信数を返します。これなら、友だち獲得が多い店舗と、現在の配信対象が多い店舗を混同せずに済みます。
公式資料確認日:2026年10月23日(日本時間)。本稿では実アカウントの配信、到達率、再来店・売上効果を測定していません。
